アルネ・ヤコブセンは、デンマークが生んだ20世紀で最も影響力のある建築家兼デザイナーであり、今日のモダンな北欧デザインの原型を作り上げたデンマークデザインの父と呼ばれています。建築物、チェアー、照明、掛け時計・・・多くの名作を残した背景に、ヤコブセンのプロダクトデザイナーとしてのルーツを辿る“幻の作品”の存在がありました。1930年代後半、ヤコブセンはベラヴィスタ集合住宅をはじめとした大規模リゾートプロジェクトの成功をきっかけに、デンマーク最大手の電気機器製造会社「Lauritz Knudsen(ラウリッツ クヌーセン)」のテーブルクロックデザイナーに抜擢されました。大戦の影響もありわずかな期間で販売終了となったことから“幻のテーブルクロック”とも呼ばれているこのプロダクトは、それまで住宅設計を主としてきたヤコブセンにとっての転機となり、その後の歴史に残る数々のプロダクトデザインの幕開けになった作品と言えます。
現代仕様にモディファイされたこれらのクロックは、LEDライト、ムーブメントセンサー、スヌーズ機能が新たに搭載され、バッテリーが220Vのコンセントタイプから2本の単3電池に変更。またアラーム音も専用に開発されました。
当時ヤコブセンはアラームの電子音の採用に最後までこだわりをもっていました。しかし当時の技術力では、現在のような人の耳に受け入れられる電子音を作り上げるまでには至りませんでした。今回の復刻に際し監修を行ったテイト氏は、何百もの音を音響士に作らせ、ヤコブセンが実現できなかった電子音を作り上げることに最後までこだわりました。のちにテイト氏はこう語っています。「当時とは異なる「音」を復刻させることは、この上なく難しいことでした。幾度もの「ヤコブセンならどうするだろうか」という判断を乗り越えた末、彼の抱き続けていたイメージに最も近い音を作ることができた」と。
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