Vol.3 // 北欧デザインが愛される理由(3) 北欧各国のデザインーフィンランド編

アルヴァ・アアルトが設計したアカデミア書店の2階にある「カフェ・アアルト」。映画『かもめ食堂』のロケ地としても知られる。「ゴールデンベル」という名のペンダントランプもアアルトのデザインだ。場所はヘルシンキ中央駅の近く。

アルヴァ・アアルトが設計したアカデミア書店の2階にある「カフェ・アアルト」。映画『かもめ食堂』のロケ地としても知られる。「ゴールデンベル」という名のペンダントランプもアアルトのデザインだ。場所はヘルシンキ中央駅の近く。

「北欧デザイン」として、しばしば北欧諸国はひとまとめにされがちだ。地域性や民族性などを考えると、それはある意味では正しいが、もし日本、韓国、中国をひとくくりにされたなら、どうだろうか。

一般的に、「スカンジナビア」とはデンマーク、ノルウェー、スウェーデンを指す。また、フィンランドは共和国だが、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンは王国である。言語においても、フィンランドがウラル語系の言語なのに対し、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンはゲルマン語系の言語を用い、ある程度は相互の言葉を理解できるという。日本語の「ありがとう」を例に挙げると、フィンランドは「kiitos」だが、デンマークは「tak」、ノルウェーは「takk」、スウェーデンは「tack」といったように似ている。以上のことから、後者はひとつの文化圏ととらえることもできるだろう。しかし、それぞれに歴史や文化があるように、デザインも微妙に異なる。

まずは、フィンランドから見ていきたい。20世紀のフィンランドデザインの礎を築いたのが、アルヴァ・アアルトだ。ユーロが導入される以前のマルカの紙幣に登場するなど、建築家やデザイナーといったカテゴリーを超えた存在感を誇る。代表作に、1933年に発表された「スツール60」がある。今では、類似品も見られるシンプルな形状のスツールだが、フィンランドの森に自生する白樺を材料に、試行錯誤を重ね、「Lレッグ」と呼ばれる当時としては画期的な技法を開発したことは、椅子の歴史においてエポックメイキングな出来事であった。しかし、脚の開発に時間を費やしたにもかかわらず、座面と脚の組み立ての工程では、あっさりとビスで留めている。デンマークなら、いかにビスを使わずに、工芸的に美しく仕上げることにこだわるだろう。彼は、ビスを用いることで量産化を可能とし、安価で提供することを目指したのだ。フィンランドの家庭には、このスツールをはじめ、アアルトのプロダクトがひとつはあるといわれるが、華美ではない庶民のためのデザインが、フィンランドの魅力なのである。

次回は、スカンジナビア諸国のデザインを解説する。

アルヴァ・アアルトが1933年に発表した「スツール60」。リーズナブルな価格、シンプルなデザイン、積み重ねが可能などの機能性により、発売から80年が経過した今もなお、住宅から公共の場所などまで愛用され続けている。

アルヴァ・アアルトが1933年に発表した「スツール60」。リーズナブルな価格、シンプルなデザイン、積み重ねが可能などの機能性により、発売から80年が経過した今もなお、住宅から公共の場所などまで愛用され続けている。